WORLD BUILDING — KYOSHI SEIBUTSU
分類できないものだけが、
本当に生きているのかもしれない。
— アガベスト / Agavest, Pelican Works
鋸歯生物(きょしせいぶつ)とは、動物と植物の双方の性質を同時に持つ、架空の生命体の総称である。光合成を行いながら移動し、根を伸ばしながら眼を持つ。捕食しながら開花し、冬眠しながら光に向かう。
既存の生物学における「動物」と「植物」の分類は、進化の結果として生じた便宜的な区分に過ぎない。鋸歯生物が生きる世界では、その境界線がはじめから引かれることはなかった。動くことも、根を張ることも、同じ一つの命の振る舞いである。
これらは作り手アガベストによって樹脂粘土で造形され、架空の自然誌に収録される標本として記録されている。
運動器官が高度に発達し、外見上は動物に近い形態を持つ。体内に光合成器官を持つが、主なエネルギー源は捕食または腐植摂取。感情表現や縄張り行動が観察される個体が多い。
光合成器官が体表の大部分を占め、外見上は植物に近い。長時間の静止が得意で、擬態能力が高い。移動は行うが極めて緩慢。水と光量に強く依存する。
動植物の特性が拮抗している稀少な分類。環境に応じて優位な性質を切り替える可塑性を持ち、適応能力が高い。生態系の中で鍵種となる場合がある。
乾燥環境への高い適応性を持つ亜分類。体内に大量の水分を貯蔵する塊根・塊茎状の構造を発達させており、外見は多肉植物に近い。水分不足になると急速に機嫌が悪化する。
現行の分類体系では位置づけが困難な個体群。既存の四分類に収まらない特性の組み合わせを示す。記録・研究が継続中であり、新たな分類軸の設定が議論されている。
鋸歯生物の生息域は多岐にわたる。深林、岩場、乾燥地帯、潮間帯など、地球上のあらゆる植生環境に対応した種が記録されている。共通するのは、動植物どちらかが単独で生存困難な境界的環境に多く見られる点である。
種によって異なるが、光合成・摂食・腐植分解など複数の経路を持つ。単一経路への依存度が低いため、環境変動への耐性が高い。ただし、複数経路の維持にはそれ相応のコストがかかる。
分類学上の境界は、生態学的には豊かな場所である。動物でも植物でもない鋸歯生物は、どちらの捕食者からも標的にされにくく、どちらのリソースにもアクセスできる。分類されないことは、弱さではなく適応の戦略かもしれない。
「分類する」という行為は、理解のためではなく、安心のためにある気がする。名前のついていないものに、人は不安を感じる。
でも、この生き物たちには名前をつけたくなかった——正確には、どの棚にも入れたくなかった。動物でも植物でもなく、その間にいることが、彼らの本質だから。
樹脂粘土でひとつひとつ形にするとき、「これは何者か」ではなく「これはどこに在るか」を考えている。存在の場所を作ること。それがこの図鑑の目的かもしれない。
"Classifying" feels like something we do for our own comfort, not
for understanding. We get anxious about things without names.
But I didn't want to give these creatures a fixed category. Being
between animal and plant — that is their nature.
When I shape each one in resin clay, I ask not "what is this?" but
"where does this exist?" Creating a place for them to be. Perhaps
that is what this field guide is for.
特定の動物や植物の組み合わせからイメージを起こす。どちらが「主」かを意識的に揺らすことから始める。
アルミ線や発泡材で内部骨格を組む。重心と可動域を考慮しながら、最終的な姿勢を決定する。
樹脂粘土を少量ずつ積層・整形する。体表のテクスチャ、葉脈、鋸歯のディテールをひとつひとつ手で作る。
アクリル絵具や染料で着色。植物的な部位と動物的な部位で質感と色調を意識的に変える。
完成した個体に番号を付与し、生態・生息域・特性を記録。図鑑への収録をもって完成とする。